日本で代表的な葬儀と言えば、仏式のお葬儀が主流でしたが、「家族葬」、「直葬」、「自由葬」、「生前葬」など、昨今では時代の流れと共に多種多様なお葬儀が執り行われています。
では、世界の葬儀事情はどうなっているのでしょうか。世界には日本では聞いたことがないようなお葬儀がたくさんあります。その一例をご紹介いたします。
【ジャズ・フューネラル(ジャズ葬)】
ニューオリンズの葬儀の様子
掲載動画参考サイト
YouTube:kookydaveチャンネルより
ジャズが生まれた街、アメリカのニューオリンズのお葬式は「ジャズ葬」が一般的です。ジャズ葬は主に2部構成となっています。第一部はファースト・ラインと呼ばれるジャズバンドの先導のもと、その後ろをセカンド・ラインと呼ばれる故人の家族らや友人らが棺を抱え、墓まで運んでいきます。墓までの道のりは、みんなで賛美歌を歌いながら、故人をしめやかに偲びます。そして、なんと埋葬後はファースト・ラインを先頭に、セカンド・ラインとともに街中をパレードのように練り歩き、演奏される曲調も墓場までの重々しい雰囲気とは打って変わり、帰路の演奏ではとてもポップで明るくノリの良い音楽が奏でられます。パレードに参加する人はハンカチを振り回したり、派手な傘を突き上げたりして、歌って踊ってパレードを盛り上げます。日本でも有名な「聖者の行進」という曲は、実は元々はこのニューオーリンズの葬儀の第二部、帰路のパレードで演奏されていた曲なのです。
なぜ、埋葬に行く時は静かな曲を流すのに対して、帰りはこのような明るい曲を選ぶのでしょうか。この謎を解く鍵は、ニューオーリンズの時代背景にありました。
冒頭でも紹介したように、ニューオリンズはジャズが生まれた街であり、黒人の街でもあります。ジャズは黒人によって生み出されました。黒人たちは、長らく奴隷として利用され、虐げられ、そして人種差別によって不当な扱いを受けてきました。黒人奴隷にとっては生きるということは、苦しく悲しいことでした。辛い現世から解放されるためには、もやは「死」こそが最大の救いだったのです。帰路の演奏の明るさには、苦しく悲しい「生」から解放されて天国へ行くことを祝う意味が込められているとされています。
日本は「死」をとても辛くて悲しいという文化がありますが、文化は違えど故人を偲び、故人がどうか幸せな最後を送ることができるようにという、残されたものの気持ちは同じなのかもしれません。