多種多様な葬儀が増えている昨今。近年では「生前葬」も注目されていますが、実は「生前葬」は江戸時代からあったのをご存知ですか。
今から約200年前、江戸時代の肥前平戸の藩主、松浦静山が記した随筆集『甲子夜話』によると、当時武家の中でも最高の役職についていた家老が、城下のあるお寺の住職にこんな依頼をしました。「人生一度は野辺送り(遺骨を火葬場まで運ばれること)にあうものだから、命あるうちに葬礼をしてほしい」と言って、生前葬を行ったと記録に残ってあります。
その葬礼も当日までに棺や香花など全て準備をして、本人は白装束で棺に入り、実際にお坊さんに読経を上げてもらうという本格的なもので、埋葬される直前に棺から出てきたそうです。
こんなにも昔から生前葬が行われいたなんて、驚きですよね!この方がどんな思いで生前葬を行なったかは想像するしかないですが、恐らく前向きな気持ちでされたのではないでしょうか。きっと生前葬が行われた後は達成感と、親しい人が集まってくれたという幸福感で満たされて余生を送られたのではないでしょうか。
現在、日本の葬儀は「家族に迷惑をかけたくないから」、「金銭的な負担をかけたくない」という理由などで、参列者が家族や親族や少数の友人だけの「家族葬」や、亡くなったら通夜葬儀は行わず火葬のみの「直葬」という葬儀形態が出て来ました。今では直葬が2割、家族葬が6割とも言われていて、どんどん葬儀が小規模化していることが見て伺えます。
人生50年と言われたのは遠い昔、今では人生80年の時代です。その長い人生には、たくさんの経験と知識とその方の行き方が詰まっていると思います。その方がどのように生きてきたのか、どういう風に辛いことを乗り越えたのか、生きている間に聞いてみるととても興味深い話が聞けるかもしれません。
なかなか家族が集まらない。ここ数年は親戚に会っていない。そんな方も多いかと思いますが、こういう時代だからこそ、「そうだ!親戚に会いに行こう!」と前向きな気持ちで何か家族や親戚が集まれるイベントを企画してみるのもいいかもしれませんね。
そういう意味で「生前葬」は、家族や親戚一同が集まれるいい機会になるのではないでしょうか。