生前葬という言葉を聞いたことはありますか?昨年アントニオ猪木さんやコマツの会長が生前葬を行われたことで、にわかに耳にすることも多くなったキーワードではないでしょうか。
しかし、多くの方は生前葬について具体的なイメージを持っていないことも事実です。
生前葬と聞いて多くの方は、生前に葬儀を行うことだと思われるでしょう。
実際に芸能人が行う生前葬では、僧侶を読んで戒名をつけてもらったり、棺を用意し入棺体験するといった“模擬葬儀”の模様がメディアを通じて報道されるため、多くの人は葬儀の前倒しを生前葬だと思っているのかと思います。
しかし生前葬とは、いわゆる“葬儀”のように慣習や社会的意義などにおいて、そこに明確な定義はなく、また、今の葬儀の様式が昭和○○年ごろに葬儀屋によって作られたもので、伝統や風習に基づいたものではないということも踏まえると、いわば“好きにしていいい”のが生前葬だともいえるのではなでいしょうか。
実際にコマツの会長は“感謝の会”という形で、お世話になった方を招いたパーティー実施されました。
生前葬という言葉に対して、今現在で、様式はないといってもいいのです。
◾なぜ生前葬をするのか
生前葬をしたいという方は、限られています。そもそも、生前葬という発想がないのではないでしょうか。さらには、一般の方は前述した芸能人の数少ない事例以外、生前葬を見たことも参加したこともないのが事実です。
つまり、生前葬といってもピンとこないといった方がいいかもしれません。
・予算と時間の調整ができる生前葬
生前葬にはいくつかのメリットがあります。
生前葬に本人の意向が反映できるのは言うまでもない。演出やかける費用など全て本人と相談しながら決めることができるという点。
実際の葬儀の時に一番困るのは、誰に連絡すればいいか、ということ。事前に全く準備も整理もされていない場合、通夜、葬儀までの1~2日で連絡先を探し、連絡するのはご遺族にとって大きな負担になります。
しかし、生前葬だと、本人がいるわけだから、本人に聞けばいい。
さらに、日にちを自分達で決められるため、十分な準備期間を取ることができます。
さらに葬儀だと、大抵急な話なため、全ての予定をキャンセルし、参列してもらわなくてはなりませんが、生前葬だと、どうしても来ていただきたい方には事前に予定を合わせた日程で実施できる。
参列者の負担も少なくて済むというわけです。
・人との繋がりから自分の生きてきた意味が見える
当たり前のことですが、葬儀は人生最大かつ最後のライフイベントでありながら本人がいません。
本人だって言いたいこと、伝えたいことがあるだろう。
日本人はどうしても内に秘める傾向がある。あれもこれも喋ることを好まず、
察する、空気を読む、それで伝わらなければ、それでもいい・・・。それが日本人の美徳とされることも事実です。しかし、これだけ人との付き合いが少なくなり、コミュニケーションがインターネットを介して行われる今、お世話になった人には感謝の気持ちを直に伝え、過去の過ちを詫、もっと素直に言葉で伝えても良いのではないでしょうか。
周囲の人たちも、感謝の気持ちや褒め言葉を直接聞かせてあげてほしい。
人は人によって創られていくものである。心からの言葉を交わすことで、そこに、生きてきた意味や自分像が見えてくるかもしれません。
だが、自分の想いを家族や友人に伝えることができる場が現状の日本ではほとんどないのです。
生前葬はもしかすると、自分自身の人生で出会った人を総括し、生きた証となるライフイベントになるかもしれません。
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毎日新聞 コマツ元社長「生前葬」 がん公表「元気なうちに感謝を」
https://mainichi.jp/articles/20171122/ddm/008/020/057000c